2017会計検査院報告 国立病院機構の経営改善に向けた取組の状況

会計検査院平成29年度決算検査報告手交
http://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201811/09kaikeikensa.html
2018年11月9日 「平成29年度決算検査報告」を内閣に送付しました。
http://www.jbaudit.go.jp/report/new/index.html
平成29年度決算検査報告の概要
http://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary29/index.html

P403
独立行政法人国立病院機構が設置する病院の経営状況等について

機構の経常収支率は、22年度に107.0%となったのをピークに悪化に転じており、28年度には99.2%(経常収支額△68億円)と機構設立以来初めて経常赤字となった。そして、29年度の経常収支率は、28年度よりは改善したものの、99.7%(同△21億円)と2年連続の経常赤字となっている。なお、機構に対しては、23年度以降、診療事業に対する国からの運営費交付金は実質的に措置されておらず、原則として診療収入(医業収益)等の自己収入により診療事業の費用を賄うことになっている。

■経営改善に向けた取組の状況(抜粋)

ア 経営改善に向けた取組の概要
機構の病院は、機構本部が発出した「新たな資金管理・投資基準・経営改善の枠組みについて」等(経営改善通知)により資金管理をするなどして自院の経営改善を進めることとされている。経営改善通知によれば、各病院は、毎年度、向こう5年間の資金計画を作成し、計画期間中に必要な投資を行ったことにより債務の償還が困難となるなどの資金余力の不足が見込まれた場合には、機構本部の同意を得た上で、経営改善計画を作成して実施することなどとされている(資金余力の不足見込額を「経営改善必要額」)。経営改善計画には、病院が今後取り組もうとする実施項目ごとに、実施項目を実現するための具体的な計画や、実施項目が実現した場合の収支の改善見込額等を記載することとなっている。

そして、各病院は、原則として、計画作成の時点で確実に見込まれるなどしている収支見込額に、各実施項目に係る収支の改善見込額を合計した額(経営改善計画額)が経営改善必要額を上回るように経営改善計画を作成することとなっている。各病院が28年度の資金計画を作成したところ、機構の全病院の64.7%に当たる92病院は、計画期間中の資金余力が不足すると見込まれたことから、28年度の収支改善に係る420実施項目等から成る経営改善計画を作成して機構本部の同意を得ていた。

イ 経営改善の達成状況
上記92病院の28年度の決算額をみると、71病院(92病院の77.1%)が経常赤字となっていて、経営改善計画で見込んだ経常収支額を達成していたのは10病院(同10.8%)にとどまっており、82病院(同89.1%)は計画を達成していなかった。そして、前年度よりも経常収支が改善していたのは27病院(同29.3%)となっていて、残りの65病院(同70.6%)は、前年度よりも経常収支が悪化していた。このように、各病院が経営改善計画で定めた実施項目を着実に実行することで病院の経営改善を図ることを意図した経営改善通知に基づく28年度の取組は、必ずしも順調に行われたものとはなっていなかった。

ウ 実施項目の設定及び実施の状況
各病院が28年度の経営改善計画を作成するに当たり、機構本部は、診療機能や取り巻く環境が病院によって異なるため、各病院がそれぞれの創意工夫により経営改善計画の立案・作成をする必要があるとして、実施項目の具体例、実施項目の設定及び経営改善計画額の算定方法や考え方、注意点等を示しておらず、各病院がそれぞれ自院に見合った独自の実施項目を設定し、これに係る経営改善計画額を算定することとしていた。
そこで、各病院で作成した経営改善の実施項目に係る取組内容についてみると、収益の増加を図ることで収支改善を目指すとしているものが374実施項目(420実施項目の89.0%)と大半を占めており、その中でも患者数を増加させる取組(患者増の取組)が205実施項目(同48.8%)と最多となっていた。また、経営改善計画額をみても、患者増の取組が72.5%を占めていた。患者増を実現するための手法についてみると、①近隣の医療機関を訪問するなどの地域医療連携の取組を強化することによるとしているもの、②病棟を増改築して受入れ可能な患者数を増やしたり、新たな機器を導入してそれまでは対応が困難であった患者を新たに受け入れたりするなど、病院施設の拡張等を前提としていたものなどがあったが、それらの経営改善計画額に対する実際の収支改善額の割合(達成率)は、①で38.4%、②で49.2%などとなっていた。

このように、患者増の取組については、経営改善計画全体に占める実施項目数及び経営改善計画額は多いものの、計画どおりに取組を実施して収益を確保することが困難となっている事態が少なからず見受けられた。この背景には、病院の経営改善には収益の確保が必要であり、そのためには患者数を増やすことが不可欠であるとして患者増の取組を実施項目に掲げる病院が多い中で、実際の患者数は地域の人口動態、医療需要その他の様々な事情に左右されるため、経営改善計画で見込んだ患者数とかい離が生じやすいことなどにもよるが、比較的容易に実施項目として立案でき、かつ多額の経営改善計画額が期待できる患者増の取組を、その実現可能性や妥当性について十分に検証しないまま実施項目として掲げた病院が少なからずあったことによると認められる。

しかし、経営改善計画は、本来、これを着実に実行することで病院の経営改善を実現させるものであるため、取組実施の効果についての見込みや実施に伴って見込まれる費用や収益の想定が楽観的すぎるなどしていて、作成の当初から実現可能性や妥当性に疑念が生ずるような内容であっては、これを着実に実行する意欲に欠け、ひいては経営改善の実現に結び付かないおそれがある。そして、前記のように計画どおりに収益を確保できていない事態が多数見受けられている状況に鑑みると、経営改善計画の作成に当たっては、経営改善必要額を踏まえ、必要に応じて抜本的な改善策を講ずるとともに、それらの実施項目については、各病院において実現可能性や妥当性について十分に検証した上で作成することが重要である。

一方、費用の節減を図るとした取組(費用節減の取組)の達成率は78.8%であり、収益を増加させる取組と比較すると相対的に順調な傾向が見受けられたが、費用節減の取組は必ずしも多くはなかった。これは、費用節減の取組によって患者サービスの質の低下を招くことをためらった病院があったことなどにもよるが、費用節減の取組の具体策を考案するに至らなかった病院もあったことなどによると思料される。したがって、費用節減の取組のうち、他の病院でも同様に取り組むことが可能なものについては、より一層の情報の共有が有用である。

エ 経営改善計画に対する機構本部による確認等の状況
前記のとおり、経営改善計画を病院が作成するには、機構本部の同意を必要としている。そして、機構本部は、各病院が作成した前記のような楽観的な想定等による経営改善計画の原案についても、基本的には原案のとおりに同意していた。
しかし、前記のような状況を踏まえると、機構本部において、各病院が経営改善計画を作成するに当たり、実施項目の設定及び経営改善計画額の算定方法や考え方、注意点等についても経営改善通知で示すなどして、各病院が実現可能性や妥当性に疑念の生じない的確な経営改善計画を作成できるようにしたり、計画同意の際に十分確認したりする必要があったと思料される。

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★本院の所見★

機構が、国の医療政策や地域医療への貢献等といった役割を今後とも継続的に果たしていけるよう、次のような点に留意することが重要である。

ア 機構の経常収支率は、29年度は28年度よりは改善したものの、傾向的には22年度をピークとして悪化していることから、一層の経営の改善に向けた取組を進めていくこと。その際、既に効果のあった取組を他の病院でも同様に展開していくなどして、一層の費用節減に努めること

イ 一般大規模病院の経営状況は、機構全体の経常収支に大きな影響を及ぼしており、一層の経営改善に向けた取組を進めること。その際、引き続き材料費の節減に努めるとともに、地域の医療需要を踏まえて、他の医療機関との連携強化による患者の確保等を進めたり、入院患者の動向を踏まえて、必要に応じて病棟集約を含めた効率的な病床運用に努めたりすること

ウ 経営改善計画に基づく経営改善は必ずしも順調に行われていないことから、各病院が、それぞれの状況に応じて、実現可能性があり、かつ、必要に応じて抜本的な改善策も検討した的確な経営改善計画を作成し、これに沿って経営改善に向けた取組を着実に進めていけるよう、機構本部において、実施項目の事例、実施項目の設定及び経営改善計画額の算定方法や考え方、注意点等を病院に具体的に示すとともに、経営改善計画の同意に際しては各実施項目の実現可能性や妥当性についても確認するなど、病院に対する指導を一層充実させること

エ 地域医療構想を踏まえ、今後、少なくない病院で病床機能の転換や病床数の増減等が想定されることから、これに対応した収益の増加を図ったり費用の節減を進めたりするなどして、病院経営の健全性を確保するために適時適切な対応を進めていくこと本院としては、機構が設置する病院の経営状況等について、引き続き注視していくこととする。

 

 

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主な病院グループ2017決算・2018予算等まとめ(第三弾)
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